「安全くん」もっと使って
●高齢者単独の運転 音声で支援/県警と民間企業などが共同開発
1人で車を運転する高齢者を音声で支援する装置「安全くん」。県警と民間企業などが共同開発し、昨夏発売したが、知名度はいま一つ。県警は各地で体験試乗会を開き、本格的に普及に取り組み始めた。高齢者事故防止の切り札になるか。
◎同乗者の代役、心に余裕
「バックします。後方の安全を確認して下さい」
4月中旬に郡山市内であった「安全くん」を取り付けた車の体験試乗会。ギアをバックに入れると車内に機械の音声が流れ、お年寄りが慎重にハンドルを切った。
「安全くん」は、本体と車体各部をつなぎ、運転状況に応じて音声で安全運転を支援する装置。エンジンをかけた時、右左折時、バック時、停車時など六つの操作をした時に注意の音声を出す。ブレーキを踏んで30秒後にも「交通事故に注意してください」と呼びかける。高齢者が信号待ちなどで継続してブレーキを踏んでいると、力が弱まって前進し、追突するのを避けるためだ。通常運転中も5分間隔で「車間距離をとりましょう」などと注意を促す。
大きさは縦6センチ、横7.5センチ、奥行き2.2センチほどでダッシュボードなどに取り付ける。外観はETC車載器のようだ。県警と県交通対策協議会、車の電子機器製造会社「レゾナントシステムズ」などの共同開発で、昨年7月に発売された。価格は税抜きで1万2000円。
県警によると、2009年までの5年間に交通事故で死亡した614人のうち、約52%にあたる317人が65歳以上の高齢者だった。県警は今年、高齢者の交通事故による死者数を年間50人以下に抑えることを目標として掲げている。
交通事故をデータベース化している交通事故総合分析センター(東京都)が06年までの3年間に75歳以上の高齢者が起こした人身事故を分析すると、同乗者がいない場合の事故率は、同乗者がいる時の約4倍だった。運転操作に合わせて声をかける「安全くん」は、一人暮らしの高齢者が増えるなか、同乗者の代わりを狙って開発された。
二本松市西勝田の自営業渡辺忠信さん(66)は所属する交通安全協会の説明会で知り、発売直後に購入。仕事で週5、6日使う車は手放せないといい、「うっかり運転にならない。気持ちの上で確認になる」と話す。
他県警からも多くの視察があるが、これまでに売れたのは約500台。まだ一般化したとは言い難い。普及率を上げようと県警交通企画課は昨年から、自動車学校などに協力を求め、「安全くん」搭載車の試乗会や講習会を開いてきた。また、二本松地域や相双地域など、購入者に対して取り付け費の補助金を出している地域もある。
同課の伊藤健治課長補佐は「高齢者から車を取り上げるのではなく、サポートして少しでもよい運転を心がけてもらいたい」と話している。