免許証視野検査に異議
石川EU協会会長・医師
今年は、私が70歳代に入ってから初めての自動車運転免許証書き換えの年であった。誕生日の数か月前になると一通の郵便が届いた。指定された自動車学校の一つで「高齢者講習」を受けてくださいというものである。これを省くと新しい免許証はとれない。通勤に毎日運転をしている身としては、「なんだ、いまさら」という気がしないでもない。
希望した日時に、予約しておいた自動車学校へ行くと、似たような年齢の男女5人がいた。講義、運転マナーに関するビデオ上映、2組に分かれての実地運転、瞬時の反応テスト、視力検査などがあった。約1年前、左目網膜に血栓が生じ、現在、視野の中心部に小さな暗点のある私は、特に視力検査が気になっていた。しかし、視力、視野とも問題とはならず、高齢者受講証をもらって帰ってきた。
「人を年寄り扱いしやがって」と、はじめは思っていた。が、いざ終わってみると、やはり反応は若いときほど速くないことも自覚でき、悪くない講習だなとも思った。
その数か月後に免許証書き換えの時期がきた。運転免許センターへ赴き受け付けを済ませると、そのすぐあとに視力検査があった。右目は問題なかったが、検査官に左目の中心暗点のことを告げると、彼は「では視野検査をします」といって私を別室へ移動させた。
部屋の中でも、暗めの一角に学校の工作で作られたような粗末な視野計が置いてある。あごを載せる台がすでにぐらぐらとゆれ、安定しない。あごを載せたあと、頭部が前後しないように制御すべき額用のバンドが、ちょっと力を入れるとグッと前方へ移動する。もしこの状態で視野を測れば、視野は優に数十度は狭く出る。「この視野計を基準にして合否が判定される」とのことであった。
冗談じゃない。こんないい加減な検査で、免許証が無効にされたのでは、だれだってたまらない。免許証の有無は、現代では本人だけの問題にとどまらず、その人を取り巻く公的私的なつながりにも多大な影響を及ぼす。
ダメなものを通せといっているのではない。免許証というものが法にのっとった権威ある許可証である限り、それに見合った整備は早急にやっておかないといけない。「被害者」が出ないうちに、当局は早く改善を!
( 2010年4月7日 読売新聞)